回し蹴りのやり方で悩んでいる人
「いくら練習しても回し蹴りのフォームがぎこちない…」
「ミットやサンドバッグにキックしても手応えを感じられない」
「相手のガードをぶっ壊すくらい強力な回し蹴りをしたい」
こんな悩みをムエタイ歴20年で元プロキックボクサー&自衛隊格闘指導官であった私が解決します。
本記事の内容
- 威力のある回し蹴りに必要な力と5つのポイント
- 回し蹴りの回転と脱力をイメージしやすくする道具
回し蹴りと言えば、空手やキックボクシングなど打撃系格闘技の代表的な技の一つ。
しかし、回し蹴りは複雑な動作が必要なため、実は中上級者でも極めるには時間が掛かる技。
習得するのは簡単ではありませんが、マスターしたら実際に相手の腕やあばらを折れるくらい破壊力のある回し蹴りになります。
威力のある回し蹴りに必要な力と5つのポイント
回し蹴りは空手、キックボクシング、テコンドーやその他格闘技でフォームや威力にかなり差があれど、最も破壊力があると言われるのがムエタイ式のキック。
“Samkor Kick”
(サムゴーの蹴り)
サムゴー選手は現役時代にこの強力なミドルキックで、日本人選手をガードの上からボッコボコに蹴りまくってました。
全日本キックボクシング連盟 全日本ライト級最強決定トーナメントのDVDでもサムゴー選手を特集していて、数試合が収録されています。
日本のトップ選手達をキックで吹っ飛ばしている様子は圧巻です。
このムエタイの鞭のようなキックの破壊力を最大限に引き出すために必要な力が、
「回転力」と「脱力」
です。
体全体の回転力を、脱力した蹴り足に伝えることで威力のある回し蹴りになります。
そのために必要なポイントは下記の5つ。
- 軸足の踏み込み
- 軸足のかかとを上げる
- 腰を回す
- 蹴り足は完全に脱力
- 腕も脱力して振る
これら5つのポイント全てが揃っていれば威力のある回し蹴りを放つことができます。
1つずつ確認していきましょう。
軸足の踏み込み
軸足を踏み込まずにその場で蹴るテクニックもありますが、回し蹴りの威力は当然弱くなります。
体重の乗った強力なキックを放つには前方に踏み込む必要があります。
元ルンピニー2階級王者のサムエー選手も踏み込みの大切さを解説しています。
“Perfect kicking from Sam-A Kaiyanghadaogym”
(サムエ―から学ぶ完璧な蹴り)
前進する力を踏み込んだ足を軸にして体の回転力に変換するのです。
軸足のかかとを上げる
前に踏み込んだ勢いをそのまま回転力に変えるためには、軸足はかかとを上げてつま先立ちにする必要があります。
軸足のかかとが床に付いたままだと、軸足自体がブレーキになって体の回転を殺してしまいます。
前に踏み込み軸足が床に着く段階でかかとは上げておきましょう。
なお、バレエみたいに極端なつま先立ちになる必要はなく、かかとが床から少しでも離れていれば十分です。
実際、タックルや組技もある総合格闘技では蹴る際の隙を少なくするために、ベタ足に近い状態でキックすることも多いです。
完全なつま先立ちだとちょっと押されたら簡単に倒れちゃいますからね。
あとここで一つ注意点。
ジムでよく教えられている、踏み込んだ際に前足のつま先を外に90度くらい開くのは相手に読まれやすいです。
つま先はほぼ前方か、開いても45度くらいまでに抑えておきましょう。
また、蹴る際は軸足のつま先だけで全体重を支えることになるので、筋力の弱い人は普段からつま先立ちで歩いたりして鍛えておきましょう。
腰を全速力で回す
蹴りに限らず、突き・パンチやその他の打撃もほぼ全て腰の回転が重要です。
腰で打撃すると言ってもいいくらい。
腰の回転が足りないと威力が弱くなるのはもちろん、蹴り足が届く距離も短くなってしまいます。
初心者の蹴りを見ていても、腰がほとんど回っていなくてただ足を上げて、脚力だけで蹴っていることが多いです。
なので相手にお尻を向けるくらいのつもりで腰を回しましょう。
私は骨盤の先端で相手を蹴るようなイメージで腰を回しています。
また、ただ腰を回せばいいというわけではありません。
楽して腰をゆーっくり回して足を出しても威力は出ません。
腰の回転が速いほどキレのある蹴りになります。
これは野球やゴルフのスイングと同じです。
ゆっくりバットやドライバーをボールに当てても全然飛びませんよね?
プロ野球選手やプロゴルファーのスイング映像を見ればわかりますが、すごい速度で腰と体軸を回転させ、その速度がバットやドライバーにも乗っています。
鞭のようにしなり破壊力のある蹴りにしたいなら、腰と体軸の回転速度も意識しましょう。
蹴り足は完全に脱力
初心者に多いのが蹴り足に力が入ってしまうこと。
慣れないうちは脚の筋肉で蹴り足を持ち上げようとしてしまいがちです。
結果、蹴りの威力もスピードも大幅に下がるだけでなく、余計な力が入っているため体力も消耗します。
蹴り足は脚の付け根から下は脱力して、踏み込みと体の回転力で脚を放り投げるようにキックしましょう。
腕も脱力して振る
中上級者でも意外とできていないというか、知らない人が多い重要なポイントが腕の脱力。
腰の回転力を最大限に高めるためには上半身の動きも大事です。
踏み込みと同時に蹴り足と同じ側の腕を振り上げた後、腰を回す方向とは逆方向にその腕を振ることで体の回転に勢いをつけます。
しかし、腕を振る際にやりがちなのが、腕に力が入ってしまうこと。
腕に力が入ると肩までもが腰の回転と逆方向に回ってしまい、回転力にブレーキをかけることになります。
蹴り足同様、腕も肩から下は完全に脱力して振りましょう。
「そうは言ってもなかなか力を抜けきれない…」
そんな悩みを抱えた方にとっておきの方法を最後に紹介します。
回し蹴りの回転と脱力をイメージしやすくする道具
回し蹴りをしようとしても腕や脚に力が入ってしまい、フォームや威力がいまいち。
そんな時におすすめのある道具があります。
それはでんでん太鼓です。
柄の部分をくるくると回すと、両サイドの紐の先にある球が太鼓に当たって音を出すという、日本の伝統的なおもちゃです。
このでんでん太鼓の柄の部分を頭、腰から軸足、紐と玉の部分を腕や脚だとイメージしてください。
でんでん太鼓のようにぶれない体の軸の回転と、余計な力を抜いて遠心力で腕と脚を振るのが理想的な回し蹴りのフォームなのです。
実物があるとよりイメージしやすいので、見たことない方は1つ購入してみてください。1000円もしませんよ。
自分の体がでんでん太鼓になったようにイメージして、一連の動作を反復練習して体に叩き込みましょう。